浄土宗の法要⑥~盂蘭盆会(うらぼんえ)~

住職三分法話67                  令和7年7月1日

浄土宗の法要 ~盂蘭盆会(うらぼんえ)~

『盂蘭盆』(うらぼん)という言葉は馴染みがないかもしれませんが、『お盆』と言えば誰もが知っている仏教行事であり、日本の文化です。

この『お盆』の正式名称が『盂蘭盆』(うらぼん)であり、これはインドの古い言葉「ウランバナ」という言葉に由来し、「逆さ吊りの苦しみ」を意味します。

お盆の行事の由来は『盂蘭盆経』というお経に次のように説かれています。

目連尊者(もくれんそんじゃ)というお釈迦様のお弟子が、すでにこの世を去った母があの世で安寧に暮らしているか神通力によって見てみると、目連尊者の母は餓鬼道という悪い世界に堕ちて苦しんでいました。目連尊者は、餓鬼道から母を救いたい一心でお釈迦様に相談します。するとお釈迦様から「あなたの母は生きている間、あなたには優しい母だったかもしれませんが、他者への慈悲を怠った為、餓鬼道に落ちています。母を救いたければ、雨季の間修行に励んでいる僧侶達が7月15日に修行を終えるので、その僧侶達に食事の供養を施しなさい」と教えられます。目連尊者がその通りにしたところ、母は逆さ吊りの苦しみの世界である餓鬼道から解放されたと説かれています。

この逸話は単なる昔話ではなく、私たちに「慈悲とは何か、親や先祖への供養とは何か」を問いかけています。

また日本では、縄文時代より祖先の霊がこの世に戻ってくるという信仰があり、1300年前の奈良時代には仏教の『盂蘭盆』と融合し、長い年月を経て、500年前の室町時代には盆踊りや迎え火、送り火の風習が始まり、先祖供養をする現在の『お盆』に近い形として定着しました。

『お盆』は、亡き人を偲び供養すると同時に、先祖に対して感謝をする機会です。ご先祖あっての自分ということは言うまでもなく、改めてご先祖の数を考えると自分の父母(2人)、祖父祖母(4人)、・・・10代前は1024人、20代前には100万人を超えるご先祖がいて、今の自分がいることの有難さを感じます。その命のつながりを考えると、直接ご恩を受けた亡き方々に対しての供養はもちろんですが、顔や名前も知らないご先祖に対しても一年に一度くらいは手を合わせることは当たり前のことだと思います。その感謝の供養の方法が『お盆』の特別な食べ物のお供えや飾りつけや迎え火送り火というような風習となっています。そして浄土宗においてはご先祖への感謝を忘れず常日頃から「なむあみだぶつ」のお念仏を称えることが何よりもの先祖供養であり、自身の心を育てることにつながります。    合掌