浄土宗の法要⑦~宗祖降誕会(しゅうそごうたんえ)~

住職三分法話68                    

『宗祖降誕会』とは浄土宗の宗祖、法然上人のご誕生を祝し、報恩感謝を捧げる法要です。仏教の開祖のお釈迦様のご誕生の法要を単に『降誕会』と呼びますので、区別する意味で浄土宗では法然上人のご誕生の法会を『宗祖降誕会』と言います。

法然上人のお誕生日は長承2年(1133年)4月7日です。4月8日がお釈迦様のお誕生日ですので、全国の浄土宗寺院では4月7日、8日、両日またはいずれかの日に『降誕会』の法要を行う寺院が多いです。
東京・大本山増上寺では毎年、4月7日午前に法然上人ご誕生法要の『宗祖降誕会』を行い、午後に法然上人ご命日法要の『御忌会(ぎょきえ)』を行います。そして翌日の8日の午前にはお釈迦様のご誕生法要の『降誕会』を行っています。

法然上人のご誕生については伝記に次のように記されています。
法然上人の母である秦(はた)氏(名は不明)は法然上人をご懐妊される際、剃刀を飲み込む夢をご覧になられました。これは法然上人が将来、髪の毛を剃刀で剃り、僧侶として人生を歩まれることを暗示していたと伝わります。
そして法然上人がご誕生の際には空から2本の白い幡(はた)が屋敷内の椋の木に舞い降りるという不思議な出来事がありました。この白い幡は7日間その木に留まり、上空へと飛び去ったと言われています。法然上人のご両親はこの出来事を奇瑞と受け止め、その椋の木を大切に守り、のちにその木は「誕生椋」と名付けられました。

法然上人の誕生から約70年後に法然上人の弟子の熊谷直実公(僧名蓮生(れんせい)がこの誕生の地を訪れ、法然上人に思いをよせ詠まれたお歌が伝わっています。

両幡(ふたはた)の 天降(あまくだ)ります 椋(むく)の木は 
世々(よよ)に朽ちせぬ 法(のり)の師のあと

《意訳》 法然上人に教えていただいた『念仏によって阿弥陀仏に極楽浄土へ救われる』教えはこの椋の木のように、いつまでも朽ち果てることがなく、長く後の世の人々にまで伝わっていくことでしょう。

はるばる鎌倉から京都そして岡山のお師匠様の郷里にたどりついたとき、直実公はこれが伝え聞いていた『誕生椋』かと、感慨深げに眺めたことでしょう。
直実公は法然上人から授かった念仏の教えによって救われたお方です。私も同じように念仏の有難さ、法然上人への感謝を忘れず日々過ごしてまいりたいと思います。
                           合掌。「なむあみだぶつ」