住職三分法話㉒

令和3年10月1日
住職三分法話㉒

相手を思いやる気持ち

願以此功徳(がんにしくどく)   平等施一切(びょうどうせいっさい)

同発菩提心(どうほつぼだいしん) 往生安楽国(おうじょうあんらっこく)

 

<意訳>

このお念仏とお経の功徳を 一切の人々に平等に施します。全ての人が菩提心(仏教を信じる心)
を起こして安楽国(極楽浄土)に往生しますように願います。

 

『総回向偈(そうえこうげ)』というこのお経はお勤めの総まとめとして読まれるお経です。

30年ほど前、修行時代にいつまでも続く長い読経の時、このお経が読まれるとお勤めの終わり
が近いということですので、ほっとしたのを思い出します。

そして時が経ち、僧侶となって約30年。コロナ禍の今、このお経の尊さを感じています。
仏道を志した時、多くの人はまず自分や自分の身内の者が極楽に往生させて頂くますよう
にと願いますが、自分だけではなく一切の人々の極楽往生を同じく願うことが仏教の真意
だということだということをお勤めの度に改めて感じています。

『三尺三寸のお箸』という昔話を紹介させていただきます。

昔、「地獄」と「極楽」の両世界の見学に出掛けた人がいました。
地獄ではちょうど食事の時間で、食卓には豪華な料理が並んでいました。しかし地獄の人々は、
三尺三寸(およそ1m)もある長いお箸を使い、なんとか自分の口に持っていこうとして、
いつまでも食べることが出来ず、皆やせ細っている状態でした。

今度は極楽に行ってみると、極楽の人々は同じように三尺三寸の長い箸を使って食事をとって
いましたが、お互いが向かい合った相手の口へ長いお箸を使ってご馳走を運び、食べさせてあ
げていて、皆が笑顔で食事を楽しんでいました。

「自分さえよければ」の思いではだれも幸せになれないという教訓のお話です。相手に施すこと
により自分も幸せになれる。今日も関わる全ての人への思いやりの気持ちを忘れずにお念仏と共
に生活をしていきたいです。
合掌 同称十念