令和4年5月1日
法然上人と御家人(ごけにん)② ~熊谷直実(くまがいなおざね)~
法然上人がご在世の鎌倉時代、将軍(鎌倉殿)と主従関係を結び家来(家人)となった
武士を、将軍への敬意を表す「御」をつけて御家人と呼ぶようになりました。
その御家人の中には法然上人の弟子となられた方が多くおられます。
今回は法然上人の弟子の御家人の熊谷直実をご紹介いたします。
直実は1184年、平氏との一ノ谷の戦いで活躍しますが、敵将である自分の息子と
同い年の16歳の平敦盛と戦うことになり、殺さず逃がすべきか迷いながらも武士
として心を鬼にして討ち果たします。その後は戦場とはいえ若者を含めた多くの
命を奪ってきたことに後悔し苦悩します。
そのような時に人づてに法然上人のことを聞き、京都の法然上人の庵を訪れ胸の
内の苦悩を打ち明けます。
「私は戦で多くの人を殺しました。地獄行間違いなしです。その自分が極楽へ往生
することなどできるのでしょうか。」
その直実の問いに法然上人は
「ただ念仏を申しなさい。そうすれば必ず極楽に生まれることができます」
と答えられます。
直実は涙を流しながら
「自分は手足を切り落としでもしないかぎり救いはないと思っておりましたし、
そうするつもりでおりました。ところがお念仏さえすればよいというお言葉。
あまりの有難さに感涙してしまいました」
と、その場で武士の身分を捨て、髪を剃り落とし法然上人の弟子になります。
そして四六時中、念仏を称え修行にはげみます。また阿弥陀仏のおられる西方に
背を向けることはできないと思い、京都から関東に帰る時も西方に背を向けない
ため、後ろ向きに馬に乗って関東まで帰ったというほど実直な性格でした。
さらに、法然上人を慕うあまり、兄弟子が法然上人より授かった法然上人直筆の
『南無阿弥陀仏』の掛け軸を取り上げてしまい、法然上人に叱られたという逸話
もあります。
鎌倉時代の坂東武者らしく荒々しくもあった直実は、己の罪の重さと向き合い、
一途に極楽への往生を願い、ひたすらお念仏にはげまれた実直な方でした。
その直実の信仰心を見習い、これからもただ一向に念仏にはげみたいと思います。 同称十念
( 2022年5月1日 )
住職三分法話㉘
令和4年4月1日
法然上人と御家人(ごけにん)➀ ~甘糟忠綱(あまかすただつな)
~法然上人がご在世の鎌倉時代、将軍(鎌倉殿)と主従関係を結び家来(家人)となった武士を
将軍への敬意を表す「御」をつけて御家人と呼ぶようになりました。
その御家人の中には法然上人の弟子となられた方が多くおられます。
武蔵の国の御家人、甘糟忠綱もその一人です。
甘糟忠綱は建久三年(1203年)【1192年説もあり】10月、京の東山の草庵で暮らす71歳
の法然上人を訪ねました。
命令により戦場に向かう直前だった忠綱はどうしてもその前に法然上人に一目会って聞きた
いことがありました。
忠綱は法然上人の説く念仏の教えを信仰してはいましたが、武士という人を殺すことを
生業(なりわい)とする己に悩んでいました。
そして法然上人に次のような質問をします。
「私は武士の家に生まれ、これまでもこれからも戦をして殺生をしなければならない身です。
もし仏門に入り武士を辞めたならば末代まで臆病者と呼ばれるでしょう。何とか武士を続け
ながら後生、極楽へ往生することはできないでしょうか?」
その質問に法然上人が静かに答えられました。
「阿弥陀様はその人の罪を選ぶことは無く、時も場所も縁も関係なく、今の身のまま“なむ
あみだぶつ”と己の罪を懴悔し念仏を称えることで、必ず救ってくださいます。あなたも必ず
極楽往生が遂げられる事でしょう」
忠綱はそのお言葉に感激し、鎧の下に袈裟をかけ、戦場へ向かいました。
もとより、命捨てる覚悟で挑んだ戦いは壮絶を極め忠綱は重傷を負い
「もはや、これまで!」と覚悟を決めた忠綱は、刀を捨て、声高々に念仏を称え
合掌したまま敵に討たれました。
その時不思議なことに上空に紫色の雲が沸き立ち空をおおいました。
後にその知らせを聞いた法然上人は「あぁ、甘糟が極楽往生を遂げたのですね」とつぶや
かれたと伝記に伝わっています。
殺生は絶対に良くないことですが、阿弥陀仏の救いを純粋に信じ、己の生業をつらぬいた忠綱の
生き様は見習いたいものです。 同称十念
( 2022年4月1日 )
明日から春のお彼岸入りですね。今週になってから位牌堂のお参りの方やご回向のお申込みの方が
増えてきました。
今年は例年にない雪の量でしたが、なんとか駐車場の雪も解け、永代供養墓前もお参りできるほどには
除雪できました。お足元は不安定な状況ですので気を付けてお参りください。

21日の春彼岸法要も感染対策を講じて例年通り行います。
回向受付:9:00~10:55
法話 :10:00~10:50(楠美知剛住職)
法要 :11:00~12:00
位牌堂もお参りいただけますが、21日は混みますのでご不安な方は21日を避けてお参りください。
位牌堂をお持ちの方で、追膳のお供えをご希望の方は21日以外でしたらまだお受けできます。
先にお電話でお申込みいただいて、追膳代は後日でも大丈夫です。
ご来寺の際はマスクのご着用、手指洗浄や消毒などご協力をお願いいたします。
(寺院内での飲食は禁止しております。)
( 2022年3月17日 )
今月も「青い森でのびのび育つ会」様におすそわけをいたしました。


今回もお檀家さんより大きな文旦とりんごをご寄付いただきました。
他にもスナック菓子や飲料、ゼリーなどもご寄付いただき本当にいつもありがとうございます。
どこの団体様でも果物まではなかなか用意できないけれども、お配りすると大変喜んでいただけると
お聞きします。
4月もおすそわけの予定があります。ご自宅で賞味期限に余裕のある食品や未使用の日用品、文房具など
ありましたら、少量でもかまいませんので(1袋でも)正覚寺にお持ちくださればこのような活動に提供させて
いただきます。
また正覚寺の位牌堂内(位牌堂入って左側)に設置の冷凍庫に冷凍したお餅と果物(主にパイナップル)
が入っています。時々、生の果物やお菓子、お花も置いています。
ご自由にお持ちいただけますので、ぜひ観音様にお参りしてお持ち帰りください。

( 2022年3月15日 )
住職三分法話㉗
令和4年3月1日
法然上人が生きた時代
祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声、諸行無常(しょぎょうむじょう)の響きあり、
沙羅双樹(さらそうじゅ)の花の色、盛者必衰(じょうじゃひっすい)の理(ことわり)を表す。
驕(おご)れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如し。
《意訳》
インドの祇園精舎という寺の鐘の音のように、全てのものが移りゆき滅んでいくという諸行無常の
響きがある。沙羅双樹の綺麗な花の色も、栄えた者もいずれ必ず滅びゆくという無常を表す。
平家も隆盛の時期は長くない、ただ春の夜の束の間の夢のようなものだ。
有名な『平家物語』の冒頭の一節です。
法然上人はまさにこの時代を生きた方です。源氏と平氏の争いで京の町が戦火に包まれた時、法然上人は数え歳五十一。
町の人々と同様に明日の命もままならない日々を送られながらも、救いを求めて来られる人々の話を聞き、
お念仏の教えを布教し、命がけでご自身も修行に励まれておられました。
晩年、法然上人はこの頃を思い出し、「経典を読まない日はなかったが、木曽義仲が京の町に攻め込んできた日だけは
経典を読むことはできないほど町は大混乱だった」と述べられています。
まさに死と隣り合わせの日々です。
その中で近くで多くの人が命を落とし、栄華を極めた平氏が滅んでいく様子を見て、この世の無常を身をもって感じられたはずです。
この世はいつ命を落とすか分からない無常であるがゆえに、さらには後生は地獄に落ちるかもしれない我が身を思うと、
後生は必ず極楽浄土へ救われたいと思うのは誰もが抱く自然な気持ちだと思います。
法然上人の「この世はこんなに苦しい事ばかりですが、お念仏を称えれば必ず阿弥陀様が極楽浄土へ救ってくださいます」
というお示しは当時の人々をどれだけ勇気づけたかはかり知れません。
NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では平安から鎌倉時代にかけての大変な世の中の様子が詳細に描かれています。
当時と今を重ねて、世の中がどんなに大変で無常に満ちていても、生き抜く強さを法然上人から学びつつ、
今日もただ一向に「なむあみだぶつ」。 同称十念
( 2022年3月1日 )
先日「青い森でのびのび育つ会」様に今年最初のおすそわけをいたしました。
法事の際にお寺に納めていただいたお供物や、わざわざお持ちいただいた食品を
おすそわけしております。







「青い森でのびのび育つ会」様は子どもさんの不登校を経験した
保護者の方々の会です。
主に不登校や不登校傾向のある子どもさんと親御さんのサポートをされています。
様々な悩みを持つ親御さんのおしゃべり会、食材のおすそわけ会、子供さんや
大人の洋服や制服、雑貨、家電製品などのお譲り会などもされています。
詳しくはホームページ、Facebookでご確認ください。
2月はコロナウイルスの感染拡大により中学生が分散登校になり、家庭にいる時間が
増えたためおやつなど喜んでいただけました。
現代は少子高齢化の急速な進展による財政の逼迫や人員不足による限界があり、
公的な福祉サービスだけでは対応しきれない多様な生活課題があります。
ひとり暮らしのお年寄り、高齢者同士の介護、ひきこもりの子供さん
と同居する高齢の親御さん、障碍のある方と暮らすご家庭、ひとり親家庭、
共働き家庭など家庭の在り方が様々です。
このような中で普通の暮らしがままならない方の生活課題は複雑化しています。
自助では解決できない問題や公助ではカバーしきれない問題を互助によって
補っていく必要があると思います。
コロナ禍にますますその思いを強くしております。
今年も正覚寺は「共生」をテーマに地域活動を継続してまいります。
( 2022年2月18日 )
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